建ったばかりのニューオータニ・ガーデンタワーの前に立つ婚約中の家内。
45年前、1975(昭和50)年5月の写真である。
その日は来日したエリザベス女王のパーティーに出席する為、家内はホテルで着付けをお願いした。着付けを終え庭に出ると、出来たばかりの結婚披露宴会場を見つけた。部屋からは窓一面に池や滝の素晴らしい庭園が広がる。「ここにしよう!」思わず2人で顔を見合わせ、“鳳凰の間”に決めた。その時に撮った1枚である。
結婚披露宴での来賓の祝辞は翌日には忘れているものだが、次のスピーチだけは今でもよく覚えている。
「結婚したばかりの20代は“愛”の日々、30代になると“努力”に変わり、40代になると“忍耐”となる。そして50代にはもう“諦め”に。 しかし子供達も巣立ち、また2人だけの生活が始まる。そんな60代、今度は心からの“感謝”に変わるのだ…」と。
昨年10月、子供や孫達家族11人がSKYに集まり恒例の誕生会を行った。
その場で私は上記のスピーチを思い出し、その話をした。すると家内は「我々はず~と“愛と感謝”の日々ね…」と笑って言った。
窓からの暮れなずむ街は、沢山の高層ビル群を除けば45年前と変わらないとさえ思えた。 行き交う一人一人に、走り去る車の一つ一つに、それぞれの人生の喜びや悲しみがあるように、我々の45年もいろいろな事があった。
振り向くと、孫達と楽しそうに微笑んでいる家内の姿。その髪の毛に白いものが少し混じって見えた。仕事ばかりで家のことは家内に任せきりだった45年間。「ありがとう」、心の中でつぶやいた。
いつの間にか私は古希を超え、家内も来年古希となる。 あっと言う間に時は過ぎるけれど、我々が そして家族の皆が、いつも そして いつまでも“愛と感謝”の日々であることを、心より願っている。